そう言ってやりたかったが言うこともできない・・。女になった男は辛いぜ。
結局そのまま夜になった。
俺は疲れてテーブルに腰掛けていたがその時一人の少女が目に付いた。
おどおど誰かに話しかけてはガックリ肩を落とす。時には威嚇されて逃げ出す場面も見られた。
そのままガックリとして俺と同じように席に着く。こいつも俺と同じらしい。
俺はそいつに話しかけることにした。
「よう彼女!どうしたんだ?」
「えっ」
彼女は驚いて俺の方に振り返った。
ふむ。なかなか可愛い顔してるじゃないか。あと3年ぐらいでストライクゾーンだな。
ショートカットのよく似合う16〜7ぐらいの少女だ。
彼女は俺の腰に差した剣を見ると顔をほころばせた。
「まぁ冒険者の方なんですね。私の他に女性の方がおられるなんて・・。」
「おう。まだ冒険に出たことはないがね。」
・・・女になってからはな。と心で付け加えることを忘れない。
それを聞いて彼女の顔が更に明るくなる。
「じゃあ私と一緒ですね!あ・・申し遅れました。私、マリアと申します。」
「俺はゴンザ・・じゃねえ、テイファだ。あ・・あんた魔術学校出たばかりなのか?」
俺は彼女の胸に誇らしげに付けられたまだ真新しい魔術学園の紋章を見ながら言う。
「そうなんです。お師匠様に世界を回って広く知識を求めてこいと言われまして・・。」
「なるほどな。で、あんたも相棒が見つからない口か。」
俺がそう言った途端マリアの表情が暗くなった。
「そうなんです。私みたいな役立たずはいらないって・・。」
「ははは・・。俺も似たようなモンだ。似たモン同志で組むかい?」
「え・・・。わたしとですか?」
「今この場にいるのは俺とあんただけだぜ。」
「ありがとうございますっ。よろしくお願いしますっ。」
マリアは喜んでOKしてくれた。少し頼りない気がするが魔術学園を卒業しているし腕はそこそこあるだろう。
互いに一人よりまだ安全ってモンだ。
「男手も欲しいところだな。2人くらい。」
「そうですね。女性2人旅は危険でしょうからね・・。」
「まあな。だがそれだけじゃないぜ。何かと男の力が必要なことも多いからな。」
「え?」
「まず女だけだと誰からも舐められるのは確実だ。仕事にもありつけないかもしれん。」
「はぁ。そうですね。」
「それに純粋な力だけなら男には恐らく勝てねえからな。何かと必要なときもあるだろう。」
「でも・・みつかるでしょうか・・。」
自信なげに言うマリア。
「ま、なんとかなるさ。2手に別れようか。バラバラに探したほうが効率もいい。」
俺は努めて明るくそう言った。マリアは笑顔で答えてくれる。
う・・・その笑顔、かわいいじゃねえか。
しかしこの作戦があんな事態を引き起こすとはその時には知るよしもなかった。
1日が過ぎた。
結局俺の方は1人も探し当てることが出来なかった。
まあまだ鎧が仕上がるまで時間があるからいいか。
俺は下に降りてマリアの姿を探した。程なくマリアは見つかったのだが・・・・。
「これはこれは・・。何かの依頼かと思っていましたが貴女も冒険者でしたか・・。
なるほど女性一人では定めし不安なことでしょう。わかりました。わたくしでよければお供いたしますよ。レディ。」
「よかったぁ。あ・・それと私一人じゃないんです。もう一人テイファさんって言う素敵な女性がおられるんですよ。」
「ほう。これはこれは・・。」
俺はその光景を見て絶句した。
マリアがよりによって昨日のキザ美青年、マイケルを誘っている。しかもOKと来た。
あ・・・悪夢だ。もう会いたくなかったのに・・。
「あ・・・テイファさん。おはようございます!」
俺の姿を見つけたマリアがとても満面の笑みを浮かべて声をかけてきた。
「だれだ?このキザな兄ちゃんは。」
おれは不機嫌そうにいった。
「これはこれはテイファさん。貴女とこのような形で再会出来て光栄です。」
俺はこんな形で再会したくなかったよ。
「マリアさんはどうやら新米冒険者のようですがテイファさんはどうなのです?」
「そうだな。もうかれこれ20年・・・」
「はあ?」
「ぶるるるるる!お・・俺も新米だよ!ははは・・は・・。で、あんたは?」
「私は2年くらいでしょうか。まだまだ未熟者ですよ。」
ほほう。こんな奴でも一応それなりの経験は積んでいるんだな。
「そう言えばテイファさんはどなたかみつけられましたか?」
マリアは期待に満ちた目で俺に聞いてきた。
「ダメだ。話になんねえ。」
「そうですか・・・。」
肩をガックリ落とすマリア。こいつって喜怒哀楽の感情表現が豊かだよな。
「もう一人男手を探しておられるのですね?ならば私の知りあいに心当たりがあります。
何度も供に冒険に出ましてね。彼は私にとって親友(とも)と呼べる人物でしょうね。」
「えっ!ホントですか!?マイケルさん。」
「ええ。キッドと言ってなかなか頼りになる男です。私がここに来たとき彼から色々教わりました。」
マイケルとキッド・・・。
ナイト○イダーコンビか?