向こうにあるテーブルの上に落下し、テーブルはまるで香港のカンフー映画に出るセットのように脆くグシャッと潰れた。
辺りは一瞬、水を打ったようにシーンと静まった。
「・・マイクだ。」
「マイクだ。マイクだぜ。」
「マイクが帰ってきた。」
一人が奴の名を呼ぶと辺りが連鎖する如く囁きはじめ、最後には大喝采となった。
「ゆ・・勇者マイク・・。」
突如目の前に現れた伝説の勇者を前にマイケルはそう呟くのがやっとらしい。
「へへ。危ういところだったな。あんた。おっさんも大人げない。こんなにーちゃんに何本気になってるんだ?」
マスターは鼻を押さえながらよろよろ立ち上がると服に付いた埃を払い、
「にーちゃんじゃねぇ。その後ろのねーちゃんだ。嬢ちゃんと呼んだら鼻を折られてキレちまったのよ。」
「うしろのねーちゃん?」
奴は俺の方をちらりと見る。
「ほおーう。なるほど、なかなかいい目をしているな。姉さん。」
俺と目が合うと奴はそう言って一瞬ニっと笑い、マスターの方に向き直る。
「こりゃやられても仕方ない。」
マイクが両手を広げこう言うとギャラリー達から失笑がこぼれ初め、その内それは大爆笑と化した。
「うるせぇな。不意打ちだったんだよ。油断していたんだよ。こんなあどけない顔した女がいきなりこの俺の鼻を蹴るとは思わなかったんだよ!!」
マスターは必死にギャラリーに弁解するが全くの逆効果だ。マスターはすっかり戦意を喪失していた。
「もういい。今日はなんて日だ・・。とほほ・・。」
奴はそう言いながらカウンターに戻り先程用意していたチェインと金貨を俺の前に差し出す。
「サイズはバッチリなはずだ。多少サービスもして置いた。それは釣りだ。」
マスターは4枚の金貨を指差して言う。
「ああ・・。サンキュ。」
俺は態度をまた豹変させたマスターに多少面食らいながら両方受け取った。
ミスリル独特の澄んだ色が美しい。
しかしサービスって何なんだ?
「ところでマイク。バズヌの塔はどうだった?不老不死の秘薬は本当にあったのか?」
マスターはそうマイクに問う。
マスターがこれを問うと辺りは瞬時に静まった。みんな気になっていたのだろう。
当然と言えば当然である。今回探しに行ったのは何と言っても不老長寿薬だ。
歴代の王でさえも手に入れることの出来なかった代物だけにその効果だけでなく、宝物としての価値も計り知れない。
そして彼らのもう一つの関心事は俺とマイクとジョニーのコンビ。これは極めて異例な豪華パーティだ。
ド○えもんと忍者ハット○君とパー○ンが一本の映画に同時出場するのと同レベルと言えばわかりやすいだろう。
そんな奴らの武勇伝を聞くというのもこいつらにとっては貴重な娯楽の一つである。
しかしその娯楽は今の俺にとって恐怖の対象でしかなかった。
もし、こいつが本当のことをしゃべっちまったら・・。
しかし奴は俺のそんな心配をよそに語りだした。
「ああ。さすがにレベルが高かったよ。
ドラゴン